アイザックSS

【文章:弓子さん/挿絵:Kaiさん】





       ※注意※
          スレイヤーズネタではありません。
          おりじなる執事ネタです。









                          ↓






















俺の名前はアイザック。通称アイクだ。
はっきり言おう。俺は働くのが嫌いだ。大嫌いだ。
働くことが生き甲斐だとか、日々が充実するとか言ってる奴がいるが、俺からみたら、そいつらはよっぽど趣味も楽しみもない人生を送ってんだろうな、と思う。
働かないでいいなら、それにこしたことはないだろ?
俺は、死ぬまで毎日好きなゲームができれば、それで満足だ。
しかし、今の世の中、働かないと生きていけないようになっている。
まず金が入らない。
金がないと、ゲームも買えないし、当然生きていくこともできない。
仮に金があったとしても、働いてないってだけで、自分より格下みたいな感じに見下すバカがいるのも気にくわない。
そんな世間の常識のせいで、俺は仕方なく働くことをしないといけないわけだ。

めんどくせえ…。

だけど、汗だくになって働くような仕事は嫌だ。
朝から晩まで働くのも嫌だし、休みは週4日は欲しい。
接客なんてしたくない。工場みたいなところでも働きたくない。
俺の望みに叶う仕事を探して、したくもない職探しをしていた時、特に親しくもない知り合いに声をかけられた。


「アイク、お前、執事とかやってみないか?」


そいつの話によると、今、メイドや執事がブームになっているらしい。
それに便乗して、執事派遣会社を立ち上げたのだそうだ。


「執事が欲しいって連中のところに行って、適当に茶を淹れたり、話相手になってやればいい。どうだ、簡単な仕事だろ?クライアントが望めば住み込みもありだから、生活費は全部浮くぞ」


なるほど、確かに美味しい商売だ。
肉体労働って訳でもないし、毎日の生活の合間に主人の女の相手をしてればいいんだから、楽勝だろう。


「いいぜ、その話。乗った」


これで、毎日ゲーム三昧だ。
俺は内心ほくそえんだ。
だと言うのに…


プルルルルルルと、携帯電話が俺のことを呼び出す。
ええい、またか!!
俺は途中のゲームを放り出して、それを苛立ちまかせに掴み取った。


「アイク〜お弁当忘れちゃったよ〜。おなか空いたよ〜」
「なんでまた忘れてんだ!!先週もやっただろそれ!!」


だって〜と、電話の向こうからピーピーと泣き声が聞こえてくる。
俺は大きなため息をついた。
これが俺の主人だ。
毎日ゲームができると喜んだ俺の期待は、見事に打ち壊された。
俺の主人はとんでもないドジで、毎日なにかしら忘れ物をする。
お陰で俺は、そのフォローに毎日駆り出されている状態だ。
おなか空いたよ〜とべそをかく声を聞きながら、やっぱりため息が零れる。


「分かったよ、届けてやるよ」


せっかくラスボス戦までいったのに…。
手の焼ける主人に、俺は3回目のため息をつくと、ゲームデータをセーブして電源を落とした。
俺って、こんな甲斐甲斐しく面倒見るタイプじゃないんだけどなぁ…。
台所に置き去りにされた弁当を持って、外に出る。
そろそろ、財布を忘れそうだな。呼び出されたくないし、小銭入れでもこっそり鞄に入れといてやるか、なんて、あいつの行動パターンが読めてしまっている自分に、またため息が出た。
ガシガシと頭をかいて、弁当を届けるべく、俺は車に乗り込んだ。







Thank you for a wonderful novel


Guest



2010.11.11 UP