「ガウリイ!!大変なの!!」
安くて美味い酒を部屋で飲みつつまったりしていたところに、リナのドタバタいう足音が聞こえた。勢いよくドアが開かれる。
ガウリイは、だらしなくベッドに寝そべっていた身体を起こすと、飛び込んできたそれの姿を確認して…吹いた。
「リナ…新しい趣味か?」
「違うに決ってるでしょ!?」
叫んだリナの頭上で、ぴんと伸びた真っ白なウサギの耳が揺れていた。
「…じゃあ…今まで隠してたとか?」
「こんなものどう隠すっていうのよ…違うの!なんかわかんないけど勝手に生えてきたの…」
どうしたらいいのと首をかしげる。こういう変なことならリナの方が得意分野だろうが…突然の事に頭が回らないらしい。
さてどうしたものかと悩むその目の前で、またぴょこりと白い耳が震えた。
ガウリイの好奇心がうずいた。
触ってみたい。
「…リナ」
「なに?」
ちょっとおいでと手招きすると、なんの迷いもなく近づいてくる。
警戒心というものが無い。この年なら無理もないだろうが…もう少しリナは知るべきだとも思うのだ。
それはやっぱりガウリイが教えるべきなのだろうか?
男という生き物が、時に危険であるということを。
「………」
「ガウリイ?」
近づいてきたリナが首をかしげる。
ガウリイはそっと手を伸ばすと柔らかな耳に触れてみた。
「にゃっ!」
リナは思わず肩をすくめてその手から逃れようと身を引いたのだがガウリイがそれを許さない。
大きな手を腰にまわし、すとんと膝の中に抱えた。
「ガウリイ!?なにすんのよ!」
「ん〜?だって耳調べてみた方がいいだろ?元に戻したくないのか?」
「…も、もどしたいけど…ガウリイ原因わかるの?」
首をぐりっと曲げて見上げているリナにガウリイは微笑んだ。
前にそうなったやつを見たことある……かもしれないと。
「ほんと?」
「…まぁ、な」
「…なんか嘘ついてる?」
疑いの眼差し。
嘘をつくのは嫌だったのだが好奇心には勝てそうにない。
これはリナのためなのだと言い聞かせると、ガウリイは大きくうなずいた。
「俺に任せろ」
「…じゃぁまかせる。でも痛くしたら嫌だからね?」
「おう」
そうとわかるとリナは膝の上に座りなおし背をガウリイに預けて足を伸ばした。
小さな身体がすっぽりと胸に収まる。
悪いことをしているという罪悪感は心のどこかにあったが、別の感情を抑えられそうになくて指を這わせた。
リナがびくりと身を震わせた。
「んっ…」
「痛いか?」
「ううん…くすぐったい」
頭から生えているウサギの耳は、どうやら偽物でも玩具でも無いようで、しっかりと神経が繋がっているようだ。
耳の先をくすぐり、頭の付け根あたりを撫でるとくすぐったいのかもじもじとして手足をばたつかせた。
「ガウリイ、もぞもぞするぅ…」
「ん?こっちか?」
「にゃ、それやだ、くすぐったい!!」
「あ、こら暴れるなって!」
やだやだと暴れるそれをがっちりとホールドして離さない。
本物の耳と同様に敏感なようだった。
「やだ、耳はさわんないで」
「触るなって…それじゃぁ調べられないだろ?」
「…そうだけど…」
耐えられないのかリナは両手で耳を押さえてしまう。
触れなくなってしまえば仕方ない。
ガウリイはニコリと微笑むとリナの肩を撫でて、するりと服の中に手を滑り込ませた。
「や、なにするの…」
「だって、耳を調べられないんだから他のところに異常がないか見ないといけないだろ?」
「でも…」
すべらかな肌に無骨な手が添えられる。
じわじわと這いあがってくるそれはリナの小さな胸を包み込んだ。
肉の薄い胸は心臓のドクドクという音を直に伝えてくる。
緊張状態のそれは身体を固くしたままだ。
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