目覚める獣達

【原作設定】





春の夜風がカーテンを揺らし部屋の中に入り込む。
何処からか甘い花の香りを運びながら。
そんな夜を何となく眠れずに過ごすあたしは微かな物音に視線をテラスのある窓に向けた。


「なんか用?」


風に金髪をなびかせ立っていたのは旅の連れ。
隣の部屋の彼が何故そこにいるのかは察しが付いた。
それでもあえて問いかけたのは僅かな不安からなんだと思う。
月夜に照らされ怪しく光る彼の瞳。
青い眼差しはあたしを貫きそして低い声は言葉を紡いだ。


「何をしに来たと思う?」
「さぁ…解らないわね…」


意味のない言葉の騙し合い。
彼は笑った。


「気が付いていたんだろう?」
「何を?」
「どうして何も言わずに食べた?」
「さぁ…どうしてかしら?」


彼と言葉を交わす内にどんどん熱くなる身体。
その熱がどこから…何故来るのかあたしは知っている。


「期待していいのか…?」
「人の食事に媚薬なんか混ぜておいてよく言うわね。」
「でも、リナ…お前は知ってて食った。」
「そうね。」
「今も…俺を拒絶しない。」


一歩彼が近づいた。


「嫌…って言えばあんた、止めてくれる?」


頬に延びる手を見つめ問いかけると、間近まで近づいた青い瞳が細められる。
そして唇に熱―――


「止める気なんて無いな…」
「サイテーね…」
「だな。でも…俺を狂わせたのはリナだ。」
「人の所為にする気?」
「そう…リナの所為さ。」


薬の効果で熱を帯びた身体がゆっくりと押し倒される。
心臓が早鐘を打つのが聞こえる気がした。


「ずっと夢見てた。」
「な、にを…っあ!」
「こうやって…リナを抱くのを。」


唇と掌があたしの身体を這い回る。
敏感になっている身体は過剰なまでの反応を返し、彼がソレに興奮しているのを
感じながらあたしは目を閉じた。
再び唇に熱を感じ次の瞬間には舌を絡め取られる。


「んっ……ふぁ」


身体の熱は下がらない。
それどころか益々溶けるような疼きがあたしを襲った。


「感度が良いな…薬の所為か?」
「知ら、ないっ…わ、よ!」


熱に翻弄されながらも答えると彼の笑みが濃くなる。


「まだ抵抗しない?」
「抵抗、して…欲しいの?」
「それも楽しそうだなぁ」
「ガキね…」
「そうかな?」
「そうよ」
とつぶやいてあたしはガウリイの首に腕を回した。
引き寄せられるように口付けて彼の耳元に囁いた。


「好きよ。」


告げると少し驚いたように彼が目を見張る。


「素直なのも薬の所為?」
「そうだって…ぁ、言ったら?」
「そうだなぁ、虐めてやろうかな…」
「……バーカ。」


掠めるように、胸に首筋にキスを繰り返し、舌を這わせる彼。
長い髪が肌を擽るたびあたしは熱に翻弄された。
涙が溜まる瞳。
強く瞼を閉じると涙が溢れそうだった。


「ガウリっ、熱い…」
「もっと熱くなる。」
「……いやぁ」
「身体は嫌がってない。」


指が足の付け根に滑り込む。
抵抗を許さない強い力があたしを玩んだ。
熱と、疼きと、涙がもう止まらない。


「がうり、好き。すき…あぁっ!?」


そして、


「……俺もだ。」
「ずるいわね…」
「何が?」
「あたしにばかり言わせて。」


首筋を辿る彼の唇が笑みを刻む。


「愛してる」


使い古された安っぽい言葉。
『もっと気の利いた台詞は無いわけ?』と半眼でにらみつけても効果はない。
それどころか彼を煽るだけだろう事も察しが付いた。


「毎晩聞かせてやるよ…気の利いた愛の台詞は思いつかないけどな。」
「…はぅ、ぁあン!」
「使い古された言葉でも、飽きるくらい何千回も…」
「ゃ…あ、ああああああ―――――


その夜、彼はあたしの全てを奪っていった。


「リナ、愛してる…狂おしいほどお前だけを…。」




Fin




Short novel



2010.03.05 修正版 UP