「あー、もうだめ…一歩も歩けないわ。」
ベッドに倒れこんで呻いた。
足をバタつかせて靴取って〜と、アピールするそれに苦笑いをしつつ近寄る。
「大丈夫か?」
「駄目…全然駄目…」
片足ずつ抜いてやる。
脱がせたブーツを揃えてベッドの脇に置いた。
少し前の街で新しく買い揃えたものだ。
よくある安物。
というのも、あまり靴屋が無くて選べなかったから取りあえず買ったのだ。
しかし、結果は見ての通りで…合わない靴での旅は疲れも倍増するらしい。
「うぅ…こんな事なら、穴開いたままでも前のを履いてれば良かったわ…」
ぶつぶつと愚痴を零す。
その後も立ち寄る村や街で探したがしっくりくるものが見つからず今日に至る。
そんな彼女の足をマッサージするのが日課になりつつあるのだが…
「…やっぱり、小さい足だな。」
「んー?」
ベットにうつ伏せのそれの足を膝に乗せて筋肉をほぐしながら、よくまぁ…こんな小さくて細い足で俺と同じ距離を歩いているものだと感心する。
撫でる様にふくらはぎを触ると、くすぐったい!と足をぱたぱた。
『悪い。』と笑うと、今度は足の裏のツボを親指でぐりぐりと押す。
うーーとか、あーーとか唸りながら、ほぅと息をつく彼女。
新しいブーツで旅を始めて最初の日、あまりに足が痛いと訴えるのでマッサージしてやったら癖になったようだ。
今では、宿に着く=マッサージとなっている。
窓の外に目を向けると、夕暮れ時の空の色。
「どうする?まだ時間あるし、靴探しに行くか?」
聞くと、気持ちよさそうに目を閉じていたそれがううん。と首を振った。
今日はもういいと枕に顔を埋めてしまう。
「そっか。」
「うん、明日探しに行くわ…それか良い仕立て屋探して靴作ってもらうか…どっちかね。」
けっこう大きな街だししばらく滞在でも構わないでしょ?と言うそれにあぁ。と笑った。
右足が終れば、次は左足。
筋肉をほぐしてツボをぐりぐり押して…。
ふと気が付くと寝息が聞こえ始めているのはいつものことだ。
くすりと笑う。
そっと足の裏をくすぐってやれば、猫みたいにきゅーっと身を縮ませる。
あまりしつこくやれば思い切り蹴られるというのは実証済みなので一回だけにしておいた。
手にした足も、足首も小さくて細くて特別繊細なものに見える。
起きている時のあのハチャメチャさが嘘のようだ。
そっとリナの足に手を合わせてみれば、俺の手にすっぽりと収まってしまうほど小さくて更に驚いた。
「なんか、ずっと履きなれないブーツでも良い気がしてきた…」
彼女の足に触れながらぽろりともれた言葉。
こんな風に触れるようになって、思っても見なかった発見が沢山あって結構楽しい。
しかし、眠っていると思っていた彼女は起きていたようで…
「何言ってんのよ…」
と呆れた視線を俺によこした。
Fin
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