心の大きさ

【原作設定】





「別に問題ないでしょ?」


俺を見上げて彼女が言う。
問題がないかといえば確かに無いのかもしれない。
しかし、迷惑と言えば迷惑なのも確かだ。
彼女と共にいる時間が減るということに関しては多大に迷惑。
だけど、昔の仲間。
気の許せる相手であるということも事実。


「あぁ、良いんじゃないか?」


そういうと、彼女の肩越しに複雑そうに俺を見る男の顔があった。
断ればいいのに。とでも思っているようだ。
彼女との関係がほんの少し変わったことにどうやら気が付いたらしい。
奴なりの遠慮なんだろう。
行くところがあるからと背を向けようとする。
じゃぁ仕方が無いなとあっさり見送ろうとすると彼女がそれを止める。


「ちょっと!せっかく会ったんだから少しくらいいいでしょ!」
「…いや…」


ちらりと俺を見る。
彼女もこちらを見上げ「ガウリイもそう思うでしょ?」と聞いてくる。
ため息をつきたいのを我慢して口を開いた。


「そうだぞゼル。少しくらい良いじゃないか。」
「ほら!ガウリイもそう言ってるし!」


作り笑いもなれたもの。
俺とリナの顔を見比べて、そいつは小さく溜め息をつくと


「わかった…」


と呟いた。









その日の夜である。
彼女の部屋から戻った俺にそれが声をかけた。


「悪かったな。邪魔する気はなかったんだが…」


剣の手入れを終えてベットの脇に立てかけながら、ばつが悪そうにそう言った。
どうやら、俺はあまりいい表情をしていなかったらしい。
リナとそういう関係になってから、前は気にならなかった小さなことが気になるようになった。
例えば依頼人だったり、屋台のおやぢだったり、昔の仲間だったり。
彼女に近づく全てが気に入らない。
別に何があるわけでもない。
それでも、だ。


「いや、別に構わんさ。」


表面上は昔のように笑ったつもりだったが、やはり騙せるはずもない。


「そうは見えないがな。」
「…そう、か?」
「あぁ。よくリナは気が付かないもんだと逆に感心する。」


苦笑いして肩をすくめる。
俺は首をかしげすこし考え…


「なぁ、ゼル?」
「なんだ?」
「俺はそんなに心が広くない」
「は?」
「…のかなぁ?」


リナの意識が一時でも別のモノに向くのが嫌だ。
独占したいと思う。
でも傷つけたくないから彼女から自由を奪うことだけは絶対しない。
それでも…時々思うのだ。
閉じ込めておけたら…と。


「少なくとも…」
「うん?」
「リナに関しては、広くは無いだろうな。他に関しては…興味がないんだろう?」
「おう。」


あっさり頷くな。と呆れ顔。
自分は心が広くないと思ってしまえば、さっきは飲み込んだ言葉がすんなりと出てくるから不思議だ。


「なぁ、ゼル。」
「今度はなんだ?」
「明日には理由つけて出発してくれな。」


にっこりと微笑むと、大きな溜め息が聞こえ…
『これ以上お前に睨まれるのは御免だ。』と肩をすくめる姿があった。




Fin




Short novel



2009.11.17 UP