ヤキモチの理由

【原作設定】





最近、やけに連れがつっかかってくる。
前から過保護だとは思っていたけれど。
それでも、邪魔をするのは盗賊いじめくらいで他の事はわりと自由だった。
それが変わったのは何時からだろうか?
なんとなく、特に理由はないけど彼と寝た後からだろうか?
大人だったそれが、急に子供っぽくなった気がする。


「リナ、どこに行くんだ?」


黙って宿を出ようとすると背後から声。
あぁ、またか。と思いつつ振り向くとあたしを見下ろす青い瞳。
別に隠すことでもないが、言わなくちゃいけないほど大事な用というわけでもなく「ちょっとね」とだけ言って宿を出たのだが…
一歩後ろを、コバンザメよろしく付いてくる。
あたしは振り向かないまま彼を呼んだ。


「ね、ガウリイ?」
「なんだ?」
「別に付いてきてもらわなくてもいいんだけど?」
「…行く。」


拗ねたような声。
口元が緩むのが止められない。
あぁ、なんだろう?
なんでコイツこんなに可愛くなってしまったのだろう?


「なぁ、リナ…」
「んー?」


てくてくと大通りを歩き、薄暗い路地に入って更に奥に向かうと戸惑った彼の声。
夕闇が迫る時刻。
大通りのお店が閉まり始めれば、こちらにお住まいの皆さんが仕事の準備にかかる。
手前は酒場や落ち着いたバー。
奥に進めば進むほどお子様は立ち入り禁止の怪しい場所。


「どこ、行く気なんだ?」


店先に出てきたお姉さんが、絡みつく眼で彼を誘うがまったく興味がないらしいそれ。
さっきよりもぴったりと後ろに張り付く。
正直歩きにくい。


「だから、野暮用だってば」


ガウリイは先に帰ってなさいよ。と言うものの、嫌だ。の一点張り。
理由を聞くまでは帰らないと付いて来る。
別に付いてきても構わないけれど、変な誤解をするかどうかが心配だ。
そう思っているとお目当ての館の窓が開き「リナ!」と呼ぶ声。
窓枠を乗り越えて肩がざっくりと空いた服を着た女が飛び出してくる。
くるくると巻きの強い髪がほつれて白い首筋に流れているのが、男でなくてもセクシーだと思う。


「やっときてくれたのね!」
「えぇ。」


ぎゅぅぎゅぅと大きな胸が押し付けられる。
僅かに殺意を感じるものの、本人に悪気はまったくないことを知っている。
ふと、後ろの気配を探れば、ムッとしているのがわかる。
同姓に対してもそんな態度のそれに、やっぱり顔が緩む。
少し窮屈だけど、悪い気はしない。
ヤキモチをやかれるのもなんだか気分がいい。


「ずぅーーーっと待ってたのよ!さ、入って…て、そちらの方は?リナの連れ?」


あたしの手を引き、館に連れて行こうとしてガウリイに気が付いたらしい。
瞬時に仕事の眼に変わり彼を値踏みするように見つめる彼女。
その頬にぺちりと手を当て「あたしのだからダメよ」と一言。
その瞬間、へにゃりと歪む連れの顔。

あー。単純。


「あっそ。リナのなら仕方がないわ。貴方はそこで待ってて」


店前のベンチを指差して彼女。
その言葉に彼の反論。


「オレも一緒じゃだめなのか?」
「うちはどんなお客でも1対1のプレイが基本なの。気が散るじゃない」


…ってあんたはまたそういう誤解を招く言い方するし…
ちらりと見てみれば青ざめたそれ。
やっぱり完璧に誤解している。
一応説明しておくべきかと思ったがそれより早く彼が動く。



「ダメだ!ダメだ!!リナはオレのだ!」



あぁ、やっぱり誤解してる。
ぎゅっとあたしを抱き寄せる。
負けじと彼女があたしの腕を引いた。


「何言ってるのよ!このために今日の予約は全部空けておいたのよ!今夜は私のものよ!」
「オレのだ!」
「私のよ!」


あぁ、なんだかどーでも良くなってきた。
でも、これ以上腕をぐいぐい引っ張られるのも痛い。


「ガウリイ放して」
「り、リナ!?」
「ほーら。今夜は私のものよ♪」


しっかりと腕を抱きこみ勝ち誇ったように彼女。
どういうことなんだ!と耳元で叫ぶ彼。
あたしは両耳をふさぎ「どーでもいいでしょ?」となげやり。


「さっさと帰るのね」


と彼女が言い捨て、あたしも「じゃぁねー」と手を振り館に足を踏み入れようとしたのだが、ものすごい力が肩を掴み引っ張った。


「にゃっ!?」
「帰るぞリナ!」


怖い顔。
こんな顔を見るのは初めてかもしれない。
結構ゾクゾクする。


「だから、あんたの誤解だってば。彼女との約束あるからあたし行くわよ?」


良いでしょ?
と聞くと、益々怖い顔で「・・・良くない!!オレは真剣なんだ!!」と抱きしめてくる。
苦しいんですけど…しかも、気が付けば周りには人だかり。


「あー、もう…めんどくさい。ねぇ今回だけってことでお願いできない?」
「もう!リナとの大事な時間だっていうのにぃ…仕方ないわね…」


う〜〜〜〜。と唸り彼女を睨む馬鹿。
一応いつまでくっついているのよ!とスリッパの一撃を浴びせ、襟首掴んで館に入る。










































「…あ、えーっとリナ?」

「なによ。」

「コレ…」

「だからあんたの誤解だって言ったでしょ。チェック!」

「きゃーーーーー、待った!今の無しよ!」

「待った無し。」

「あーーーん!また負けた!だから他人が部屋にいるの嫌なのよ。気が散る!そこの人出てって!!」

「嫌だ。」

「リナぁ!」

「はいはい。」




Fin




Short novel



2009.11.17 UP