対 等

【原作設定】





誤解しないでほしい。あたしは別に嫌いなわけではない。
あったかいし、気持ちいいし…なにより、その瞬間だけは対等なのだと感じることができる。


ガウリイはいつだって大人で、あたしはいつまでたっても守るべき女の子…


この根本的な考えは、どんなに願っても彼の中で変わることは無いらしいと最近ようやく理解した。
「女子供には優しく」は彼の信念であり、亡くなったおばあさんとの約束でもある。
しかし、その”優しく”が曲者なのだ。
あたしに対しての過保護なまでの優しさは、正直息が詰まる。
盗賊いじめを止めるにしてもそうだし、夜酒場でお酒を飲むのにも良い顔をしない。


寝てみれば変わるかと思って誘ったのはこっちの方だ。


気の迷いと言うのか、賭けと言うのか…今ではその時の自分の気持など思い出せない。

ただ…それの困った顔が見たかったのかもしれない。
『お前なぁ…』とため息をついて、いつものように頭を撫でてくれるのを、子ども扱いするなと言いながら期待していたのかもしれなかった。
だけど、帰ってきたのは思わぬ言葉。










「後悔してリナが泣かないなら…俺は、抱きたい。」










あくまで逃げ道を残してくれる言い回し。
その時あたしはただ…その優しさに呆れた。
どこまで他人に甘いのだろうか?

その後のことはあまり覚えていない。
ただ思ったより冷静に物事を考えて、あたしは彼を受け入れた。
痛みに顔を歪めるたびに、大きな手が与える波に震えるたびに…それは優しく名前を呼ぶ。
涙だけは流すものかと意地を張れば張るほど強張る身体が痛みを覚えた。


「リナ…」


余裕がないのはお互い様の癖に、その時も力を抜けとか、我慢するなとか…あたしのことばかり心配してた。










ガウリイは?

ガウリイはどうしたいの?





馬鹿なあたしはかすれた声で訴えていたんだと思う。





対等に扱ってよ。

子ども扱いしないで…










こんなことをしている時点で、女として扱ってくれているのにわかってなくて…
駄々をこねて困らせた。
歯をくいしばって、逞しい腕に爪を立てて縋りつく。



痛くても良い。

我慢する。

だから本当の貴方を見せて…



きっと二人とも、途方に暮れたような顔をしていたことだろう。
ガウリイは一つ息をつくとあたしの手を腕から放し、シーツに縫いとめた。


「…我慢はするな…」
「ん…」


何を?と聞く前にそれはきた。










痛み。痛み。

熱くて、怖い。










悲鳴に似た声が喉を突いて出る。
無意識に逃げようとする身体は抑え込まれて動けない。
乱暴ではない。
だけど抵抗は許されない。

何も考えられなくなる頭の中で、この時初めて…対等になれたとあたしは思った。












だから、別に嫌いじゃないのだ。
唇を重ねることも、肌を合わせることも。
相変わらず彼の中であたしが「守るべき女の子」であったとしてもそれはもう良い。



だけど、嫌いじゃないことと恥ずかしいのとはまったく別物なのだ。



「リナ、キスしたい。」
「…キス以上を我慢できるなら…良いけど」
「それ無理」


即答して笑うそれを眺めて、嘘よと手を伸ばす。
掬いあげられるように腰を引き寄せられあたしは静かに目を閉じた。





対等に扱われるのは、いつだって恥ずかしい。




Fin




Short novel



2010.01.02 UP