寝返りを打とうとして違和感に気がついた。
毛布が何かに引っ張られるように動かない。
「………」
またかと首を持ち上げて確認する。
やっぱりそこにリナがいた。
マントにくるまって、猫の仔みたいにベッドの足もとに丸まっている。
「リナ…」
呼びかけると、眠ってはいなかったのかすぐに栗色の頭が動いた。
まんまるいこぼれおちそうな目が、暗闇の中見上げてくる。
不機嫌に膨らんだ頬から、察するまでもなく…いじけている理由はわかっている。
いい加減、そのネタでからかうのは止めればいいのに…反応が面白いから止められないらしい。
癖になるのだと彼女は言っていた。
「また喧嘩か?」
「…ちがうもん…」
「んじゃ、どうしたんだ?」
「………」
「リナ?」
黙ってたらわからないだろう?と言っても答えない。
その代わりに、くるまっていたマントを頭からかぶってしまう。
「おーい、リナ?」
「うるさいよ、ガウリイの馬鹿」
「…俺の所為かよ…」
胸のことをちょっと言われただけでこれだ。
まだリナは小さいんだし、そんなものあとからいくらでも育つだろうけれど…気になるお年頃というやつらしい。
はぁ…と息をはくと毛布をめくって少し横にずれる。
リナがふと顔あげた。
ぽんぽんと隣を叩いて手招き。
「寒いだろ。ここで寝ていいからおいで」
「うん」
なんの警戒もなく…というか毎回この言葉を待っていたかのようにもぞもぞと近寄って中に滑り込む。
流石に俺も、リナに手を出すような危ない趣味は持っていないつもりだけど…
あと数年もするとちょっとヤバイかもしれない。
リナはリナで、あったかい♪とふくれっ面を満面の笑みに変えて、縮こまっていた手足を伸ばす。
「あ、そういえば…」
「なに?」
「前から聞こうと思ってたんだけどな…」
「うん?」
「お前どうやって入ってきたんだ?俺鍵…閉めてなかったか?」
記憶力は無いほうだが、部屋の鍵はちゃんと閉める癖はある…と思う。
はっきり断言できないのが自分でもオイオイと思うのだが。
しかし、リナは…悪びれもなく笑った。
「魔法で開けた」
得意げな表情だ。
お前なぁ…と呟いてはみるものの、怒る気にはなれず柔らかな髪を撫でた。
「とにかくもう遅いから寝ろ」
「うん。明日に備えて寝るね…」
「よしよし」
きゅっと俺のパジャマを掴み、子猫みたいにすりよってくるそれの頭を抱えて目を閉じる。
そんな一見微笑ましい状況下で、腕の中の少女は恐ろしい言葉を吐きながら眠りに就いた。
「あたし…あし、た、朝一…で、ナーガぶっ飛ばす…ね」
Fin
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