綺麗な傷跡

【原作設定】





ふと視線を感じて剣の手入れを止めた。


「…何見てるんだ?」
「んー?あんたのカラダ。」


ぱたぱたと足を動かしながらベットにうつ伏せのそれ。
熱心に魔道書を読んでいたと思ったら急に何を…


「なんか、綺麗よね。」


頬杖をついていた手を伸ばして、ぱふぱふとベッドの端を叩く。
どうやらこっちに来いと言いたいらしい。
剣を鞘に収めて壁に立てかけると大人しく彼女に従う。


「で?俺の身体のどこが綺麗なんだ?傷だらけだろ?」


リナの方がよっぽど綺麗だと思う。
俺なんかが触れてはいけない聖地のような…最初は怖くて仕方が無かった。
汚れていくのでは?
俺が触れることでそれが壊れていくのではないかと…
それでも汚したいと思うのは、やっぱり俺自身が汚れているからなんだろう。
自分と同じところまで、その心も身体も堕としたい。
しかし、そう願って手に入れたそれは…変わることはなく…むしろ俺の方が引き込まれた。


「傷は関係ないわ、よっと…」


伸びてきた小さな手がシャツの中に滑り込んでくる。
自分とは違う体温。
僅かに冷たいそれの手がわき腹に触れる。
そこにある傷跡を指で辿っているようだ。
ねぇ?と呼ばれ見下ろすと堕ちた瞳がそこにいた。
服邪魔なんだけど?と言いたげに裾を引っ張る。


「…お前なぁ…」


はぁと息をついてシャツを脱いだ。
身を起こしたそれがさっきまで触れていた場所にかがみこむ。
湿った感触が脇をかすめ、胸に上がってくる。


「っ…」


向かい合うように俺の膝に跨り今度は鎖骨のあたりを舌でくすぐり、背に回した指が骨に沿うように肩甲骨を撫でる。
誰がこんな女にした?
首筋に吸い付くようにキスをするそれの肩を掴んで引き剥がす。


「何よ?」


まるで玩具を取り上げられた子供のように不機嫌に膨らむ頬。
やられてばかりと言うのはなんだか面白くない。
時には良いが…やっぱりイヤだ。


「俺にこんな事して…タダですむと思うのか?」
「…さぁ?」


くすくすと笑うそれ。
憎々しいほどに女の顔を見せる。
一気に形勢逆転とばかりに口付けようと頬に手を伸ばした。


「っ!?」


しかし、その指をぱくりと銜えて舌を絡めてくる彼女。
赤い舌がちろちろと指を辿り、その目がしてやったりと細められた。




Fin




Short novel



2011.10.31 UP