封じた鍵

01 【 傾き始めた世界 】





突然現れたゼロスは世界が傾いていると言った。
冗談でも何でもなく…ここ最近頻発している異常気象もデーモンの出現も全てその所為だと…
原因はわかってる。

あたしだ。

ゼロスの説明では、その亀裂を塞ぐことが出来るのは金色の魔王の力を引き出したあたしのみ。
壊れかけた世界を救うには…行くしかない…だけど…
ダメだと止める悲痛な声。
ぎゅっと抱きしめる腕が身体も心も締め付ける。
説得しようと笑ってみても、行かないでくれと最後は駄々をこねる子供みたいに…
心が揺らぐ。
何より守りたいのは彼なのだ。
世界なんかじゃない…あたしが守りたいのはただ一人。
でも放置すれば世界が滅ぶ。
…みんな無に変える…一番守りたい人も…消えてなくなる。
わかっているのに、離れたくない。

「ガウリイ…」
「嫌だ!何も聞きたくない!!」

頑なに拒絶する。
その様子にあたしは溜め息を付くとゼロスを見た。

「ゼロス」
「はい?」
「…やっぱりあたし…行けないわ。」

ガウリイの肩が微かに動いた。
少し揺るんだ腕から抜け出ると情けなく歪んだその顔を包み込んだ。

「そんな心配そうな顔しないで…」
「…リナ…」
「あたしの居場所は…ガウリイの傍なんでしょ?」

ぎゅっと抱きしめられる。
こんな顔をされたら誰だって…離れるなんて言えない。

「よろしいんですか?世界が消えてなくなれば…」
「ゼロス」
「はい?」
「…今更あたしに”それ”を聞くの?」

世界かガウリイその二つを天秤にかけ…あたしは彼を選んだ。
この存在が消えてしまうくらいなら世界がどうなろうと知ったことじゃなかったのだ…あの時のあたしは。
その意思は変わらず胸にある。

「だから、今は行けないわ…」
「…わかりました」

それではと消えるそれ。
あたしにとって一番大事なのは…このくらげだ。
世界よりも何よりも。

「宿に行こう…ガウリイ」

広場から逃げ出した人たちが読んだ警備兵が来るのが見えた。
こんな日に事情を聞かれて詰め所に缶詰なんてゴメンだ…
ガウリイの手を引くと、レッサーデーモンの遺体を残し広場を去った。





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Omake



2009.04.13 UP