リナのたまご

11 【 友情のかたち 】





「で?コレは何?」


ぴらぴらとリボンのついた箱をまじまじと見つめるリナ。
どこか不審げにリボンの端を摘んでいる。
それもそのはず。
箱の包装紙は昔懐かし歴代戦隊ヒーローだからだ。


「プレゼントです!」


元気よく答えたのは、どーしてもリナに会いたいと家に押しかけてきたアメリアだ。
さぁ!遠慮せず開けてください!!
と身を乗り出す彼女に、リナは思わず後ずさってガウリイを見上げた。
少し迷惑そうな視線をよこして。


「…コレ何?」


もう一度、今度はアメリアを指差して聞いてくる。
珍獣でも見るようなそんな感じ。
まぁ確かにテンションが上がったアメリアはなんだかすこし面白い生き物に見えるかもしれない。
とガウリイは苦笑いした。


「あー。うちの会社の社長の娘で…アメリア…えーっと」
「アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンです!」
「そうそう。そんな長ったらしい名前なんだ。」
「ガウリイさん長い名前覚えられないんですもんね。ゼルガディスさんなんてしょっちゅう間違えられて結局”ゼル”になっちゃいましたし。」


あ、ゼルガディスさんって言うのはガウリイさんと同期の方なんですよ。
と付け加えるのを忘れないアメリア。
そして『あれ?同期だったけか?』と笑うガウリイをリナじと目で見上げた。


「…あんたねぇ。どうせなら願い事で記憶力を上げてあげましょうか?」
「へ?」
「あんたの願い事よ。まさかそれも忘れたなんて言わないわよねぇ?」


はふっ。とため息をつくリナ。
そんな彼女の肩をガウリイは強く掴んだ。殆ど反射的に。


「俺は!」
「痛っ…ちょっとなんなのよ?」


顔をしかめたリナと目が合ってハッと我に返る。
願いを叶えたくは無い。
リナともっと一緒にいたい。
ガウリイはその言葉を飲み込んだ。


「あ、いや…」
「………。」
「な、なんでもないんだ。」
「ぁ……まぁ、まだ時間は有るんだしゆっくり考えなさいよ。」


リナはそういってプイとそっぽを向いた。
耳が赤くなっている。
もしかしたらガウリイの心を読んだのかもしれない。
彼がそれを確かめようとすると、リナがわざとらしく話題を変えた。


「さーて、じゃあ箱の中身はなんじゃろなー♪っと。」


全然興味なし。
というか不審げに見ていたアメリアからのプレゼントをがさがさと開け始める。
そして…ぴきりと固まった。
中に入っていたのはひらひらとピンクのスカートがついた水着に近いコスチューム。
胸元のリボンもピンク色。
おまけに丸いぽんぽんのついた触覚カチューシャ。
リナは箱のふたを勢いよく閉じるとぽりぽりと頭をかいた。


「リナ?」


嫌なものでも思い出したのか顔が引きつっている。
そしてぐぎぎぎぎっ。と首を動かしアメリアの顔をまじまじと見つめる。


「……アメリア」
「はい!」
「アメリア=ウィル…」
「テスラ=セイルーンです!」


リナの頭の中で”セイルーン”という言葉が何回も繰り返される。


「実は先日、蔵の中で見つけたんです!ひいひいひいひいひいひーいっお婆様が願い事をして貰ったものだってことらしいんですけど。」
「………。」
「2着あったんでピンクはリナさんにプレゼントしようと思って♪」
「………。」


固まったままのリナ。
ガウリイはリナが閉じた箱を開くとそれを取り出し広げてみる。


「でも、なんでコレをリナに?」


そう聞くとアメリアは胸を張って答えた。
友情の証です!と。


「コレと一緒にお婆様の日記が入っていて、このコスチュームを着て友情を確かめ合ったとか。」
「誰と?」
「さぁ…あ、でもこの服リナさんにぴったりのサイズじゃないですか?」


そう言ったとたんだった。
突風がおこりガウリイの手からひらひらコスチュームが消える。
そしてそれはリナの手に。
ぜぇはぁと肩で息をするリナの顔は真っ赤だ。


「やっぱり!リナさんなんですねそれを着て、歌って踊ってお婆様と友情を確かめ合ったのは!!」
「…リナがそれを着たのか?しかも歌って踊って?」
「うっ…」


一人テンションの高いアメリアは両の手を合わせキラキラとした目を向ける。


「すばらしいです!その友情が今再び時を超え、私とリナさんの間で結ばれようとしているなんて!これぞ運命です!」


さぁ!それを着て一緒に歌いましょう!
と歌詞と踊りのフリが書かれた本まで取り出すアメリア。
そしてリナは、『絶対イヤーーーー!』と叫んで慌ててガウリイの後ろに隠れる。
にじり寄るアメリアに涙目のリナ。


「もー、早く帰ってぇ!!」
「いいえ。友情を深めるまでは帰りません!さあさあさあ!」
「イヤだったらイヤよ。二度とやるもんですか、あんな恥ずかしいまね!」
「結構かわいいと思うんだけどなぁ。」


のほほんとガウリイがつぶやくとすぐに、どこがかわいいのよ!とリナが吠える。


「あたしが叶えてきた願いであれほど恥ずかしくて、いっそ消えてしまいたいと思った願い事は他に無いわよ!」



アメリアに追いかけられながら必死になって逃げるリナが可愛くて、ますます願い事なんて叶えたくないと思うガウリイなのであった。




続く…

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2010.03.05 修正版UP