「王は駄目だ。」
国民の胸中は同じだった。
無能な王様。
唯一の救いは出来が良い姫がいることくらいだ。
あと数十年は現国王の治世に苦しもうとも、子が孫が大人になる頃には国は良くなる。
誰もがそう信じて疑わない。
毎日の辛い労働、理不尽な法律、根こそぎ取り立てられる税。
しかし見上げた視線の先に聳える城には将来彼らを救いに導くであろう姫が居る。
例えそれが今現在から目を背けた他力本願な逃げだとしても彼らは口をそろえて言うのだ。
「姫が国を変えてくれる。」
と。
ならば、その姫が奪われたとしたら?
彼らの唯一の希望が消えて無くなったとしたら?
果たして民は…
続く…
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