たった一人の器

【おまけ】





「アメリア様。」

メイドに呼ばれて彼女は顔を上げた。
有能な執事が休みを取って2日目…やっぱり紅茶は彼の方が美味しいなどと思いながら。

「何?」
「お手紙です。ゼフィーリアのルナ様から。」

ルナさんから?
彼女から手紙はよく来るが、それは全て執事のガウリイ宛だ。
リナが城を抜け出すたびに”そちらに妹が行ったら連絡を。”と告げてくる。
今回もそうなのだろうか?
リナに会うのは久しぶりで、わくわくする反面…何故今回に限って自分宛に届いたのか…
アメリアは首をかしげた。

「ありがとう。」

早速受け取り手紙を開く。
相変わらず隙の全く無い美しい文字。
そこに記された内容を読んだ彼女の眉間に皺がよる。
うーん…と困ったように考える。

「ちょっとそれは困るわね…」

美味しい紅茶が飲めなくなるのは非常に残念だ。
しかし、親友の幸せを考えるならこの申し出を受けるしかない。
それに…彼女の傍にいることのほうが彼にとって良いのかもしれない。
この城にいて仕事をしている彼は完璧だけど、どこか機械的で…なんとなく寂しい感じがするのだ。
彼が彼女に好意を持っていることは、薄々だが感じていた。
けれど身分が違う。
アメリア自身は、そんなこと関係ないと思うのだが…世間はそれを許さない。
何故そうなのか…そう考えれば、時代がそうさせる。としか言いようが無い。
しかし、国王始め全ての者の承諾済みだというのなら話は別だ。
大切な親友も、有能な執事も幸せになれる。
そうなれば嬉しい。
まぁ…本人達にこのことが知らされているかは…知らないが。

「どちらにしても…休みが明けたらガウリイさんに伝えないといけないのね…」

本当に、本当に…紅茶だけは心残りだ。
アメリアはメイドの入れた紅茶を飲み干した。




―――ガウリイさんを、リナの婿にちょうだい。(by ルナ)―――





Fin

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Odai



2008.07.07 UP